くらげなす

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空に不幸を蹴り返せ!青春を感じる連作短編集


放課後ひとり同盟
小嶋陽太郎 (著)


表紙に惹かれて手に取った。青空をバックに女の子が、とても大きな蹴りを決めている!
この本は連作短編集だ。世界観を共通にした、しかしストーリー的には独立した短編小説が五話収録されている。
最初の三話は高校生たちが主人公。四つ目は大学生。最後は小学生の物語。
表紙の女の子は一番最初の話である「空に飛び蹴り」の主人公、林さんだ。


林さんは最近ロクなことがない。祖母が呆け、父の給料は減り両親は離婚寸前に。電車に乗れば痴漢され、道を歩けば猫が死んでいる。
そんな中、友人のコタケさんに誘われて“蹴り男”に会いに行く。
蹴り男はパルコの屋上で、いつも空を蹴り続けている変人だ。彼からタダで、痴漢対策の護身術を教えて貰おうという訳だ。
ところが、話を聞くと彼の蹴りは格闘技ではないらしい。空から降ってくる様々な“不幸”を蹴り返しているというのだ。
そして林さんの頭上にも、とてもたくさんの不幸があると告げるのだった。


その後、空に灰色の不幸が見えるようになった林さんは、蹴り男に倣い屋上で“不幸蹴り”に励むようになる。
休み時間に放課後、毎日ひたすら不幸蹴りに精を出す林さん。これほどマメに続けているのだから、ちょっとした趣味と言えそうだ。
しかも運動なのだから、多少はストレス発散になってもよさそうなもの。しかし林さんのイライラは募るばかり。
そして不幸蹴りの効果にも疑問が……。


“空から降ってくる不幸を蹴り返す”という、一見するとポディティブな行為。
だが、よく考えればそもそも、不幸に意識の照準を合わせる、不幸に意識を支配されるというのがよくなかったのかもしれない。
幸福になりたいのなら、幸福な方向に意識を向けるべきだろう。
現実に対処しなければいけない問題、人間関係を置き去りにしていたのもいけなかった。
何故か目で見えるようになったとはいえ、不幸などという漠然とした敵に戦いを挑んでも無駄である。


その後、不幸蹴りをやめた林さんは、周囲の人たちに改めて向き合うことで人生を好転させた。彼女のこれからの、明るい未来を感じさせる爽やかなラストだった。
でもちょっと勿体ない気もする。別の主人公目線でもあの蹴りは、かなり見事なものだったらしい。折角だし、趣味として“蹴り”を続けてみたらどうだろうか?何を目指せばいいのかはよく解らないが、“蹴り女”としてYouTuberデビューするという手もある。


他の四つの短編も面白かった。どれも爽やかな読後感、青春を感じる!
著者の小嶋陽太郎さんは、他にも青春モノの小説をいくつか書いているようだ。それらも今後読んでいきたい。